訪問先名:愛媛県県民文化会館
令和6年度のテーマは「継承と創造 文化がつなぐ時」。
美術や文芸、舞台芸術、生活文化など様々な分野でイベントが開催される、愛媛の秋を盛り上げる「文化祭」です。今回、私は10月26日と27日に愛媛県県民文化会館で開催された愛媛県華道会、愛媛県いけばな芸術協会による「いけばな展」に行ってきました。花を見たり育てたりするのは好きだけど、「いけばなの鑑賞」はちょっと敷居が高いな…という方もいらっしゃると思います。私もそんな感じです。ちょっとドキドキしつつ、会場へ!
いけばなは、四季折々の花材とふさわしい花器を用いて、その空間を美しくみせる技術の粋を鑑賞する、日本が誇る伝統文化。
いけばなの起源は仏教伝来とともに始まった「供花」であると言われています。その後、室町時代の東山文化のもとで、それまでは主に神仏に供えるものであった花が、当時の建築様式である書院造りの床の間に飾るため、決められた作法に従って生けられるようになったそうです。
そして室町時代末期に池坊専応が「器の上に自然の姿を表現する」という花の生け方の理論を整え、華道は芸術として現代まで受け継がれていくようになりました。
その後、時代とともに決まり事や考え方、スタイルなどに変化が現れ、「流派」が生まれていきます。
本展に出瓶している二つの団体にも、県内で活動する様々な流派が名を連ねており、一堂に鑑賞できるとてもいい機会でした。
水盤や竹筒など、使用されている花器に注目するのも楽しい。
まずは向かって左側、愛媛県いけばな芸術協会のブースから入場。
今年度は池坊松山支部、池坊松山中央支部、嵯峨御流、小原流、華道池房会、勝山遠州流、遠州松山支部の7つの流派の会員が出瓶しているとのこと。
会場に足を踏み入れると、まっすぐに立ち伸びた形の作品が多く、「スッキリとしてきれいやねえ」という来場者の会話が聞こえてきました。
いけばなの最も古い様式とされる「立花(六華)」、1~3種の花を使って美しさを表現する「生花」、形式にとらわれず自由な発想で生ける「自由花」が並び、投入や水盤など使われている花器も多様。
モンステラやオンシジュームなど、単品で華やぐ花材を取りあわせながら、スッと心に染みる作品に仕上げられています。
注目したいのは、生花で「器は大地、水際は命の出発点」とされている水際の美しさ。複数の草花を使っているのに、正面から見ると1本に見え、思わず感嘆のため息が出ました。
続いて右側の「愛媛県華道会」のブースへ。こちらは神園流、水明流、桂月流、古流松藤会、草月流の5流派が出瓶しています。
床の間での芸術を想定した型を守る立花や生花と異なり、イベントやステージなどあらゆる空間を飾る、フリースタイルの「自由花」の様式で生けられた作品が並んでいました。
空間を華やかにしつつ、季節感のある花材とそれに合う花器を取り合わせ、草木の持つ自然の美しさを伝える生け方はまさに華道。
エキゾチックなキングプロテアやストレリチアなどのインパクトがある花材も、秋の展示らしく、芸術的に生けられていて、違う角度からも眺めたくなりました。
使われている花材や花器は個性的ですが、自由=ゴージャスというわけでもなく、凛とした美しさが感じられ、「いけばなは引き算の美学」という言葉を思い出しました。
「自由」なら素人の私でも参考にできるかな?と思っていましたが…やはり甘かったです。
馬酔木を使った大振りな作品。圧倒されます。
各団体ともテーマは設けず、出展者が花材や花器を選んだそうです。
リンドウやケイトウなど秋の花を使った作品が多かったのですが、生け方で全く雰囲気が異なり、いけばなの面白さを感じました。
作品横のプレートには流派と出展者名のみ表記され、作品タイトルや解説はありません。見る人に意図や感性を委ねるということでしょう。
いけばなは自分の感性を使って生けるといわれます。
受け継がれてきた型を尊重しながら、草木を美しく見せることだけでなく、自然のものに宿る命に思いを致すという日本ならではの精神性があるからこそ、伝統文化として長く受け継がれてきたのだと思いました。
さて、現在、県の対象イベントの写真をインスタグラムまたはメールで応募すると抽選で花購入チケットが当たる「えひめ花いっぱいプロジェクト」が開催中です。今後開催されるいけばな関連のイベントも対象になっていますので、内容や期間などぜひチェックしてみてくださいね。
開催日/2024年10月26日(土)
開催場所/愛媛県県民文化会館 県民プラザ
開催住所/愛媛県松山市道後町2-5-1
駐車場/大型要相談・普通295台・障害者用内8台 30分100円(大型は200円)
料金/無料
問い合わせ先/愛媛県文化振興課
電話番号/089-947-5581