訪問先名:愛媛県県民文化会館 真珠の間
川柳大会の開会式
毎月それぞれ句会を開いて活動していて、年に1回この季節10月頃になると県民総合文化祭のイベントとして川柳大会を開いています。
今回は、そんな川柳大会の様子と初心者向けの講座を体験してきたのでご紹介します。
会場には、早い時間から沢山の会員さんが時間待ちや休憩の時間も、ロビーなど至る所で川柳を読まれていました。10時からの開会だったのですが、すでに多くの人がいらっしゃっていました。川柳を愛してる方々は男女問わずといった感じ。若い人は少ない感じがありました。
事務局長をされている大前さんに、川柳大会を色々伺ってみました。
ライフスタイルの変化の中で、新しい会員さんが減少傾向です。できれば吟社に入って活動して欲しいと感じています。
たくさんの人が集まってリアルな交流を通して言葉を交換することで発見や楽しみが生まれ、川柳の世界がもっと広がるし、新しい出会いにも繋がります。
川柳というと、俳句よりも一段下と思われることがありますが、そうではありません。
今はサラリーマン川柳に代表する、世相を面白く皮肉る川柳というイメージを思われる人が多い様ですけど、現代川柳は面白おかしいだけではない、俳句は風景を詠み、川柳は人間を詠む、心を詠む。
例えば、小林一茶の「やせ蛙まけるな一茶これにあり」なんて、川柳といってもいいと思うんですよね。
痩せガエルは、読み手のことを比喩しており、人生を読んでいるといっても過言ではありません。
短い言葉の中に、いろんな人の人生や背景を読み込み、人間くさいメッセージを5・7・5に込める。
受け取った側は、どういう意図でこの句を詠んだのか。その背景を想像し、読み手の気持ちに少しでも近づこうとする。この行為こそが、川柳の面白さなのかもしれませんね。
お話を伺ったのは、愛媛県川柳文化連盟の事務局長をされている大前さん。
選句の説明を聞いている、愛媛県川柳文化連盟のみなさん。
場所を移って、「初心者川柳講座」にチャレンジしてきました。
講師は、愛媛新聞で川柳の選者をされている、松木慎吾さん。
川柳を学ぶポイントは、川柳の作者は何に惹かれて詠んだのか?ことばが持っている力、川柳が詠まれた背景を考えること。
そして俯瞰した視線で句をみることで、自分の領域を出た川柳を創れるようになるそうです。つまり、客観的な目で見直しが大事という事ですね。
また、大事な事として「なぜ、川柳を作るのか?」川柳を作る目的と目標を考えてみる。そういう素地をきちんと持っていたほうが、いいものを作る近道になるようです。
でも、目標と目的を勘違いしてはいけないそうです。たとえば、「柔道でオリンピックに出場し金メダルを取ること」これを目的にしてしまったら、負けた時にあとがなくなります。かの嘉納治五郎曰く、柔道の目的は、「心身を鍛え精神を磨くこと」。オリンピックで金メダルを目標にしておけば、今回負けても次のオリンピックで金メダルを目指すことができるというわけです。
川柳も同じで、入選するために詠むというのが目的になっていないか?楽しもうという精神がとても大切とのことです。
次に先日、愛媛新聞で取り上げた川柳を例に、言葉の説得力についてお話がありました。
「ほどほどを分かっていますか雨神様」(松山 団くに子さん 愛媛新聞 9月14日掲載分より引用)
松山城であった7月の雨による土砂崩れの様子から、自然へ対するやり場のない怒りと畏敬の念を静かに詠んでいると評していたものですが、掲載の数日後に能登半島において、豪雨災害発生し、さらにこの句の重みが増すことになります。
そのときの状況を詠んだ句が、のちのち同じような状況が重なることで、再びリアルに胸に響き、言葉として生き続けているような感じがしました。
そののち、言葉の連想ゲームを通じて、アイデアを広げる遊びをしました。
こんな感じです。 こどもの笑顔 → 虫歯 → 歯磨き → ブラシ → 船 → 今治
一人で考えていて、”こどもの笑顔”から始めた連想が、最終的に”今治”に結びつく発想はなかなか出てこないと思います。言葉の広がり、それを膨らませる想像力の無限ってものに感動しました。
ちょっと繋がらないと思ってしまいそうですが、いろんな人を介することで、どんどん違うものに変化していく。これも、多くの人が集まってアイデアを出し合っているからできる面白い経験でした。
フォークソングや歌謡曲からもヒントになるものを見つけることもできます。
歌の歌詞を気にしながら、聞くようにしてみましょう。ということで、杉良太郎さんの「神様の手紙」という歌の歌詞を講座に参加している皆で聞いてみたところ…。
詞の中にあるもの、それは杉さんが今までボランティア活動などで積み上げてきた経験そのもの。だからこそ、この歌が輝いています。歌詞には、戦争や災害で人々が苦しんでいる。それを神様にあてた手紙で訴えているという内容なのです。よく「神も仏もないのか?」と言いますが、杉さんの皮肉交じりな怒りがつづられているんだと思います。
川柳を作るときに大事なのは、常にアンテナを張っておいて視野を広く持ち、川柳の幅を広げること。
背景をしっかり押さえることで、言葉に力が増し、説得力が生まれるそうです。
川柳については奥深く、この講座だけでは時間が足りなかったと思いました。
入門講座の入口の看板は、俳句(?)になっていますね。
小学生から中学生までのジュニア部の優秀句が表彰されました。まさにこれからの新しい世代。前出の大前さんも言われておりましたが、ジュニア世代が入会してくるには、まだまだ先かもしれませんが、これから育って川柳を育ててくれるのを期待したいところ。
私よりもセンスあるなーと感心させられる句ばかり。
表彰式後の記念写真、これからの川柳界をけん引してくれると期待
俳句と川柳。どちらも5・7・5。確かに一見、似ている。でも、深く知れば知るほど、両者は違っているということを学びました。
近年、俳句甲子園や、夏井いつきさんらの活躍が実を結び、松山は俳句が盛んな街として知名度をあげてきました。一方の川柳は、まだまだこれから。
前出の大前さんから聞きましたが、野球拳でお馴染みの前田伍健さんは、川柳でも才を発揮されて愛媛の川柳をけん引されていたそうです。
やはり、愛媛は5・7・5の文化が切っても切れない土地柄なんだなと思いました。
これからの若い世代がひっぱって、俳句と並んで川柳も愛されるような街になると面白いかもしれません。
開催日/2024年10月27日(日)
開催場所/愛媛県県民文化会館 真珠の間
開催住所/愛媛県松山市道後町2-5-1
駐車場/あり
問い合わせ先/愛媛県川柳文化連盟
電話番号/089-952-6774(大前事務局長)