「詩を書くこと」 坂木 透
私は宇和島で棹見拓史主催『ばらた』に出会って、本格的に詩を書き始めた。学生時代、萩原朔太郎の『月に吠える』の犬の鳴き声「のをあある とをあある やわああ」に衝撃を受け、「ことば」が、本物より「もの」になっている。これが、詩だ、と感じた。故 棹見拓史の詩との出会いは、それと同質の衝撃だった。
その世界は、心情を吐露し、歌い上げるのではなく「もの」があるだけだ。その「もの」の凄さに惹き付けられた。愛媛にも、こんなすごい詩がある。私は即座に「ばらた」族になった。だが、いつまでたっても、自分の詩は、情けない自己追求の吐露、自己誉めの歌い上げに過ぎない。愛媛の詩よ、「もの」を描け。